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欠片むすび

ポケスペのSSや日記などを書いていこうと思います。

2024'05.18.Sat
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2009'10.03.Sat
『馬鹿やろう!』
そんな罵声が聞こえた気がする。
でもそれは、自分のすぐ傍らからの発言ではなく、霞がかった遠い世界での出来事のように思えていた。
すくなくとも、倒れ行く珠紀はそう認識していた。






水を溜めた銀色の桶の淵に、白いタオルが引っかかっている。
時は明け方。
窓の外は、ようやく白み始めた東の空と、まだ濃紺をしっかりと残した西の空が、お互いを打ち消すようにせめぎあっていた。



「……ん…。」



しかれた布団の上で、珠紀は小さな声をもらし、寝返りを打つ。
そのまま深い眠りの淵から意識を起こし―――、



「あ、真弘先輩……?」



布団の傍らに、胡坐をかいている小さな少年(といっても珠紀よりひとつ年上なのだが)の姿を捉えた。
畳の上で胡坐をかいている真弘は、うつらうつらと上体を揺らしていたが、そのつぶやきに気づいて、はっと顔をあげる。
いつもは生意気な光を宿して輝く翡翠の瞳は、少し赤く腫れていた。



「おきたのか。」
「えっと、何がどうなって。」
「倒れたんだよ。帰ってる途中に。」
「倒れた…?私がですか?」
「ほかに誰がいるんだよ。」



あきれを含んだ真弘の吐き捨てるような一言は、珠紀の発言を肯定している。
珠紀はどうして自分が倒れるような経緯に至ったかを思い出そうとして、学校での出来事を思い出す。

あれは体育の時間だった。
外でマラソンの練習をしているとき、急に豪雨が降り始めた。
校舎から一番遠くのトラックを走っていた珠紀は見事ずぶぬれになり、体育が終わってからもろくに体を拭くことなく着替え、頭がぬれたままで残りの授業を受けたのだ。
豪雨はただの通りすがりの雨だったようで、帰宅するころには上がっていた。
だが、珠紀の長い髪は学校の終了までに乾ききらず、真弘と校門前でであったときには、首筋に薄ら寒い何かを感じていたものだ。
思えばそのときには、すでに風邪を引いていたのだろう。
現に、真弘と落ち合ったとき、彼に「顔赤くないか?」と言われたのだから。
珠紀はそれをてっきり冗談だと捉え、力のごとく否定して、帰路を急いだ。
だが、田と田の間のあぜ道辺りで記憶は途切れている。
おそらく、その時倒れたのだろう。



「つれて帰るの大変だったんだぞ。」
「え、真弘先輩がうちまで運んでくれたんですか?」
「ま、まぁな。」



尊敬の意をこめて真弘を見上げれば、彼は一瞬うろたえ、けれども鼻高々と腰に手を当ててふんぞり返った。珠紀の目は決して見ずに。
―――ああ、嘘なんだろうな。
珠紀はそう思ったが、口には出さず、後日何らかの手段で真実を聞き出そうと心に決めた。
それにしても、倒れる寸前に聞こえた『馬鹿やろう!』は、いささか乱暴な言い草すぎやしないか。
助けてもらったことには感謝だったが、罵声を吐かれたことに対する怒りがふつふつと湧き上がってくる。
馬鹿とはなんですか、馬鹿とは。
一言言い返してやろうかと思い、首をもたげた時だった。



「心配かけんな、馬鹿。」



衣擦れの音と、耳にかかる暖かい吐息。
体を引き起こすよう、背に回された両腕の抱擁はすこしきついくらいだったが、小さい彼の大きな心配が見て取れた。
重なりあう胸から伝わる彼の鼓動は、力強くて優しく、暖かい。
珠紀は目を閉じて、真弘の背中にその腕を回す。
そして、優しくその背を上下にさすった。
どこにも行かないから、安心して―――そんな意をこめて。



(ああ、私、馬鹿だ。)



大好きな彼を、こんなにも心配にさせてしまうなんて。
彼の言う通り、馬鹿に違いなかった。
だから、心の中でつぶやいた。



馬鹿でごめんなさい、と。

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2008'12.12.Fri
「いや、だからよ、これはちょっと限度にも程ってものがあるだろ・・・。」



 薄暗い室内。
 その中でわずかに発光するのは、少し型落ちしたデスクトップパソコン。
 鴉取真弘は画面に表示されたとあるサイトを眺め、一人ごちた。
 かれこれ年単位になるのではないかと思われるほど、放置された小説サイトを見ている途中のことである。



「ったく、管理人は何してんだよ。早く連載の続きかけよ、気なるだろーが。」
「ん…。」



 背後の寝台で寝ているはずの珠紀が、真弘の少し大きすぎる独り言に目を覚まし、もぞりと布団の中で寝返りを打つ。
 真弘は一瞬ギクっと身を震わせて口を押さえるが、幸いにも珠紀はおきていないようだった。



「危ねー、これ見られたらなんて言われるか…。」



 開かれたページにつらつらと書かれた文章。
 そこには何を隠そう真弘と珠紀が登場している。
 真弘が先ほどから文句をたれながら閲覧しているのは、真弘と珠紀のカップリングを扱っている小説サイトだった。



「…仕方ねーな、昔のやつ読み直すか。」



 小説選択ページを開いて一番上に張られているリンクから本文ページに飛ぶ。
 画面いっぱいに広がる文字列に、見つけた当初はくらりとめまいしたものだ。
 けれども読んでみると、これがなかなかアツい。
 物語の中の珠紀はとっても可愛くて一生懸命でおしとやかで、真弘のことをいつも考えているのだから、これが喜ばすにいられようか。
 しかし現実は…。



「ぐー…。」
「………。」



 真弘は昏々と眠りにつく現実の珠紀を見て、小さくため息をついた。
 付き合い始めてもう2年と少し経つだろうか。
 二人は1年前から小さなアパートを借りて同棲をはじめていた。
 最初の頃は毎晩のように虫すらも寄り付かぬほどおあついカップルであったが、最近の珠紀は世間で流行の<ツンデレ>というものを通り越し、熟年夫婦のようなそっない対応ばかりだ。
 そんな寂しい中、こんなラブラブしちゃっている自分たちの小説を見つけてしまって、のめりこまないわけが無い。
 案の定真弘はサイト内の小説を完読し、次に更新されるのは今か今かと待ち続けていた。
 しかし悲しいことに、小説は一向に更新される気配が無い。



「管理人死んだのか?生き返れよ。殺すぞ。」



 矛盾した独り言も、次第に闇夜の静寂にまぎれて消えていく。
 集中して物語にのめりこんでいた真弘の呼吸は、いつの間にか穏やかな寝息に変わっていた。




 翌朝。




 寝相の悪さですっかり乱れてしまった布団から、珠紀がのそりと起き上がる。
 いつも隣にいるはずの真弘の姿が見えなくてぎょっとするが、椅子に腰掛けパソコンをつけっぱなしで寝ている姿を捉え、あきれた。



「全くもう、寝るときは布団で寝ないと疲れ取れないでしょうに。」



 起こそうと思って、うつぶせになった真弘の肩に手を乗せようとする。
 けれどもパソコンの画面に表示された文字の羅列に、思わずその手の動きを止めた。
 意識せずとも、体の奥から熱いような冷たいような汗がにじんでくる。
 そうして固まっているうちに、気配に気づいた真弘が起きて机から上体を起こした。
 珠紀は思わず後ろに下がり、窓にかかったカーテンをシャッと開けた。



「ふぁあ~、くっそ、体いてぇ。」
「お、おはようございます。」
「んぁ?あー、もう朝か…。」



 窓から差し込む白い日差しに眠気が一瞬にして吹き飛ぶ。
 真弘は大きく伸びをして、自分が小説を読んでいるうちに寝てしまったことに気づいた。画面には読みかけの小説が表示されていることにも。




「っ!」




 真弘はばっと振り向いて珠紀を見る。
 珠紀は窓の外を眺めたままだ。
 大丈夫、気づかれていない。少なくとも真弘はそう思う。
 即座にマウスでページを閉じ、ついでにパソコンの電源も落としにかかる。
 クリックの音、そしてパソコン終了音。
 珠紀は背中越しにパソコンの電源が切れたことを確認してから、真弘を見る。完璧な笑顔を貼り付けて。



「今度からちゃんと布団でねてくださいね。」
「あ、ああ。悪かった…。」



 今日の珠紀はやけに笑顔だ。真弘は不審に思いつつも、珠紀の機嫌がよさそうなことに嬉しくなる。
 こうやって笑顔を向けられるのは久しぶりだ。



「よし、今日も行ってくるか。」



 どかどかと、小さい体でわざとらしく大きな足音をさせながら、真弘が部屋を出て行く。
 真弘を笑顔で見送った珠紀は、ひとつの秘密に内心冷や汗をかいてた。



 あのサイトを、まさか自分が作ったとは口が裂けても言えない。

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2008'03.23.Sun
 旅先で物を落とすことほど、不幸なことは無い。
 更にそれが貴重品であるならば、とんでもない打撃となる。
 珠紀はまさに今、その不幸な事態に直面していた。



「…携帯が、無い。」



 小さな呟きに、真弘はものすごく幸せそうな顔を一瞬にして不機嫌で彩り、視線を正面に置かれたハンバーガーの山から珠紀に移した。
 ここは京都駅のすぐ近くにあるハンバーガーショップ。
 都会特有の狭いスペースを活用するべく地下に設置された客席で、真弘は一番安いバーガーを4つも注文して、今まさに食べようとしていたところだ。
 ちなみに珠紀はチーズバーガーと最近発売されたシャカシャカなんとやらの2品目をセレクトしたが、携帯を無くしたショックのせいか、目の前の2品目はちっとも喉を通りそうになかった。



「ドコで落とした?」
「…分かりません。」



 二人が京都駅についてからもう5時間は経過している。
 珠紀が最後に携帯を弄った記憶は、2時を過ぎた頃。
 だからこの3時間の間に落とすか取られるかしたのだろうが、ドコで紛失したかまったく見当がつかなかった。
 京都についてから散々駅ビル内や神社を歩き回った。慣れない土地だ。地名や建物名もろくにおぼえていない。
 ここで読者諸君は疑問に思うだろう。何故、珠紀と真弘は京都にいるのか、と。
 それを説明するには、真弘の恥ずかしすぎて悲しい大学生活事情を語らなければならない。

 というのも、真弘はもう3年だというのに単位不足で留年しそうなのだ。
 成績表が届くのが春休みの最後の週という、ある意味焦らしプレイ満載な真弘先輩が通う大学は、規定単位に満たなければ、決して次の学年にあがれないシステムによって構築されている。
 真弘先輩は言った。
「留年するくらいだったら辞めてやる。」と。
 珠紀は散々止めたが、真弘曰く、珠紀と同学年になるのが許せないらしい。
 真弘らしいといえばそうだが…ちょっと将来に不安を感じずには居られない珠紀だった。
 珠紀だけでなく両親の説得にもまったく耳を貸さなかった真弘は、春休みが終盤に差し掛かった頃、こんなことを言いはじめた。

「どこかに旅行に行こう。」と。

 大学を辞めてしまったら就職せざるを得ない。
 就職するということは、自由な時間がなくなってしまうことを意味している。
 だから、最後になるかもしれない春休みを二人の思い出に残るものにしたいという真弘の希望で、遠路はるばる京都にやってきたのだ。
 美鶴が必死に「旅にお供します!二人きりになんてさせられませんっ!」と、大きな風呂敷を背負って玄関先から裸足で追いかけて来るのを振りほどくのは大変だった。
 珠紀は申し訳なくて振り返ることが出来なかったのだが、真弘いわく、美鶴は鬼の形相だったらしい。
 そこまでして(?)出てきた京都で携帯を紛失するのは、不幸としかいいようがないだろう。



「しかたねぇな。」



 真弘は心底不機嫌そうな声をとどろかせ、むんずと目の前に詰まれたバーガーを一つ手に取った。
 あれよあれよという間に一つをたいらげると、二つ目、三つ目、四つ目までも、ぺろりと食べてしまう。
 その間僅か2分に満たなかっただろうが。
 少なくとも珠紀には相当早く感じられた。



「ぼさっとしてないでさっさと食べろ、探しにいくぞ。」
「…え。」
「えっ、じゃねぇよ!とにかく早く食え!」
「は、はいっ。」



 周囲の視線もなんのその。
 鋭い眼光で急かしてくる真弘に従い、チーズバーガーとシャカシャカなんとやらを口の中に運ぶ。
 よほど気落ちしているのか、喉に引っかかる感じがした。味なんてほとんど分からない。
 もそもそと珠紀が2品目を咀嚼している間にも、真弘は自分の携帯を取り出してどこかの番号に電話しているようだった。
 けれども繋がらなかったようで、不機嫌そうに舌打ちし、乱暴にジーパンの後ポケットにねじ込む。



「食ったか?」
「はい。」
「よし、行くぞ。」



 ガタンと乱暴に席を立つと、珠紀が付いてくるのも確認せずに地下から出て行く。
 机の上には、丁寧に折りたたまれた二つの紙と、くしゃくしゃになった4つ分のバーガーの紙が乗った盆が一つ残されている。
 残骸を片付けるのはいつも珠紀の役目だ。
 ダストボックスにお盆ごと突っ込んでゴミをふるい落とし、お盆だけを引っこ抜いてボックスの上に乗せる。
 携帯が無いから万が一はぐれたら面倒なことになるなと思いつつ、珠紀は地下から地上へと続く階段を上った。

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2007'09.16.Sun
 何となく調子が悪いのは昨晩から分かっていた。
 頭の奥が痛くて、喉が痛かったから。
 案の定、翌日起きてみると熱が出ていた。体温計が示すのは37度。
 微熱だけれども、意外としんどい。 看病しましょうかという美鶴の申し出はやんわりと断った。
 してもらえたら嬉しいのは嬉しいが、美鶴に移っては悪いし、美鶴は学校に通い始めてから今まで無遅刻無欠席。せっかくの偉業を看病で台無しにはしたくなかった。
 美鶴に頼んで学校に休みの連絡を入れてもらい、薬を飲んで寝る。
 薬のおかげかぐっすりと眠ることが出来た。



 ふと、額に触れる冷たい手のひらの感触に目が覚める。
 ぼんやりと霞む視界の先に、翡翠の色がにじんでいる。



「真弘…先輩…?」
「悪りぃ、起こしちまったか。」



 いつもならやかましいボリュームの声が、今日はなんだか抑えられている。
 さすがの真弘も、弱っている病人の前でギャーギャー騒ぎ立てる気は無いようだ。
 しっとりと汗ばんだ額に触れる真弘の手のひらの冷たさが心地よい。



「熱いな。」
「熱、ありますから…。」



 もしかしたら、37度以上あるかもしれない。
 ふと、額に触れていた冷たい感触が消える。
 名残惜しくて、離れていく手を目で追うと、どういうわけか真弘が服を脱ぎ始めていた。



「せ、先輩なにやってるんですかっ…。」
「どうせなら触れる面積が大きいほうがいいだろ。」
「だからって脱ぐのは…。」



 あっという間に上半身裸になってしまった真弘は、珠紀が伏せる布団の中に侵入してくる。
 華奢なように見えて引き締まった綺麗な体が、パジャマ越しにピトリと触れた。
 なんだかおなかの辺りがくすぐったいと思ったら、冷たい何かがパジャマの内側に入り込んできてびっくりする。
 冷たい何かは言うまでも無く、真弘の手だ。
 真弘の手はパジャマを通過するだけでは飽き足らず、下着の中にまで入り込んでくる。



「んっ、せんぱ…。」
「風邪引くとな、本能が体の危機を察知して、子孫を残すために性欲を倍増させるんだとよ。」
「う、ぁっ。」



 指先が秘部に押し当てられる。今まで珠紀自身気づいていなかったが、そこは驚くほど濡れていた。
 恥ずかしくなって太ももを擦り合わせようにも、力が入らない。
 それをいいことに、真弘の手は自由気ままにうごめく。
 最初はゆっくり焦らすように入り口を擦っていたが、ふと思い出したように皮で隠れた突起に触れてくる。
 途端に甘い痺れが下半身から脳天を突き抜けて、だらしなく両足を広げてしまった。



「お前はまだガキだから、ナカよりこっちのほうが気持ちいいかもな。」
「んっ、そんなこと…っ。」



 口では否定しても、体は正直だ。
 ナカを弄られる時より強い快感が身を支配する。
 熱のせいだろうか。普段ならもっと耐えていられるはずなのに、今にも達してしまいそうで、必死にこらえる。
 意識は与えられる快感一点に集中して、自分が風邪を引いてることなんて頭から吹き飛んでいた。



「我慢せずにイっちまえよ。」



 耳元でささやかれる、吐息交じりの甘い誘惑。
 もう我慢できない。珠紀は一瞬に襲い掛かってくる強烈な快楽に腰を浮かせながら意識を飛ばした。



 美鶴が鬼の形相で襖を開くまで、あと50秒。

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2007'09.09.Sun
「卓お兄ちゃん。お兄ちゃんは彼女いないの?」



 ついさっきまで昼ドラに釘付けになっていた幼い少女の質問に、卓は読んでいた参考書を思わず取り落とした。
 少女はまだ7歳だ。コレと言って他意の無い、何気ない質問だったのだろう。
 さっきまでやっていたドラマが恋愛ものだったから、その影響かもしれない。
 夕日のように鮮やかな緋色の瞳が興味津々な光を放っていて、卓はおもわず苦笑せずにはいられなかった。
 ここまで期待されたら答えないのはかわいそうだ。



「残念ながら居ません。」
「なんで?」
「何でといわれても困りますね。居ないものは居ないんです。」
「ふーん。」



 少女はきょとんと小首をかしげる。実に愛らしい姿だ。無意識のうちに顔が緩むのが自分で分かる。
 少女はテレビの前から離れて卓の側までやってくると、必死に背を伸ばして卓の顔に自分の顔を近づけようとする。
 彼女はまだ7歳。高校生である卓との身長差は激しい。だから卓は少女のために、身をかがめる。
 少女の緋色の双眸が卓の目線と同じ高さになったときだった。



「じゃあ、私が卓お兄ちゃんの彼女になってあげるね。」



 頬に小さい唇が触れる。
 童子の体温は常に高いという。そのせいだろうか。
 触れた部分は驚くほど柔らかくて、熱かった。






 それはもう10年も昔のこと。けれども10年経っても一瞬一瞬を鮮明に思い出すことができる。
 卓は当時、光り輝く高校生だった。
 靴箱を開ければ大量の手紙が落ちてくるのが日課。毎日違う女の子達に一緒に帰ろうと誘われた。
 今はもう手紙が大量に出てくる靴箱なんて無いし、家に居っぱなしのおかげで帰路に付き合ってくれる女性は誰一人居ない。
 当時と唯一変わらないのは、恋人が居ないままなことくらいだろう。



「貴女は…まだ覚えているでしょうか。」



 書庫の整理中、偶然出てきた昔の参考書を見た瞬間思い出した、一つの記憶。
 10年経って再び卓が住む村に戻ってきた少女は当時の幼さを失い、大人の女性に近づいていた。
 呼び方も「卓お兄ちゃん」からただの「卓さん」に変わっていた。
 そもそも卓のことを完全に忘れていた。
 だからその時点で覚えているわけが無いと分かっているのに。



「今更あのときの言葉が有効かどうかを尋ねるのは…格好悪いですよね。」



 あの時少女を手中におさめておかなかったことを、10年経った今になって後悔するとは。
 当然ながらそんなこと知る由も無い10年前の自分に対して、今更愚痴るのであった。





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高校時代に手中におさめておこうとしたら究極のロリコンになってしまいますね。
うー、スランプです(沈)

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