2007'08.25.Sat
黒いペンで塗りつぶされた一箇所が、やけに痛々しく思える。
彼はどんな気持ちでこの部分を塗りつぶしたのだろう。
珠紀は手にした用紙を、もとあった場所にそっと置いた。
教科書と教科書の隙間に。
こんなところに隠すようにおいてあるということは、他の人間の目に触れさせたくないということだろう。
これは見なかったことにしなければならない。
「珠紀、開けろ。」
「あ、はいっ!」
お菓子を取りに台所まで行っていた真弘が部屋に戻ってくる。
慌てて机から離れて、ドアを開ける。
目の前には、両手いっぱいにお菓子を抱えた真弘。
まじまじと、その顔を見る。
少しだけ低い目線。気のせいでは無い。
「…なんだよ?」
「ななな、何でも無いです。」
半眼でにらまれて、思わず視線が泳いだ。
あれを見てしまったことを知られたら、きっと怒られる。
だからばれない様にしなければ。
「先輩、私は先輩が大好きですから。」
「なっ、突然何言ってんだよ。」
今度は翡翠の瞳が泳ぐ番だ。
一瞬机のほうを見てヒヤッとしたけれど、すぐに視線は別の場所を泳ぎ始める。
良かった、気づいていない。
珠紀は心の奥底で、単純な真弘に少しだけ感謝した。
あの、身長のところだけ無残に塗りつぶされた身体測定用紙を見たことは、絶対ばれてはならない。
彼はどんな気持ちでこの部分を塗りつぶしたのだろう。
珠紀は手にした用紙を、もとあった場所にそっと置いた。
教科書と教科書の隙間に。
こんなところに隠すようにおいてあるということは、他の人間の目に触れさせたくないということだろう。
これは見なかったことにしなければならない。
「珠紀、開けろ。」
「あ、はいっ!」
お菓子を取りに台所まで行っていた真弘が部屋に戻ってくる。
慌てて机から離れて、ドアを開ける。
目の前には、両手いっぱいにお菓子を抱えた真弘。
まじまじと、その顔を見る。
少しだけ低い目線。気のせいでは無い。
「…なんだよ?」
「ななな、何でも無いです。」
半眼でにらまれて、思わず視線が泳いだ。
あれを見てしまったことを知られたら、きっと怒られる。
だからばれない様にしなければ。
「先輩、私は先輩が大好きですから。」
「なっ、突然何言ってんだよ。」
今度は翡翠の瞳が泳ぐ番だ。
一瞬机のほうを見てヒヤッとしたけれど、すぐに視線は別の場所を泳ぎ始める。
良かった、気づいていない。
珠紀は心の奥底で、単純な真弘に少しだけ感謝した。
あの、身長のところだけ無残に塗りつぶされた身体測定用紙を見たことは、絶対ばれてはならない。
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