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欠片むすび

ポケスペのSSや日記などを書いていこうと思います。

2025'02.02.Sun
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2007'09.09.Sun
「卓お兄ちゃん。お兄ちゃんは彼女いないの?」



 ついさっきまで昼ドラに釘付けになっていた幼い少女の質問に、卓は読んでいた参考書を思わず取り落とした。
 少女はまだ7歳だ。コレと言って他意の無い、何気ない質問だったのだろう。
 さっきまでやっていたドラマが恋愛ものだったから、その影響かもしれない。
 夕日のように鮮やかな緋色の瞳が興味津々な光を放っていて、卓はおもわず苦笑せずにはいられなかった。
 ここまで期待されたら答えないのはかわいそうだ。



「残念ながら居ません。」
「なんで?」
「何でといわれても困りますね。居ないものは居ないんです。」
「ふーん。」



 少女はきょとんと小首をかしげる。実に愛らしい姿だ。無意識のうちに顔が緩むのが自分で分かる。
 少女はテレビの前から離れて卓の側までやってくると、必死に背を伸ばして卓の顔に自分の顔を近づけようとする。
 彼女はまだ7歳。高校生である卓との身長差は激しい。だから卓は少女のために、身をかがめる。
 少女の緋色の双眸が卓の目線と同じ高さになったときだった。



「じゃあ、私が卓お兄ちゃんの彼女になってあげるね。」



 頬に小さい唇が触れる。
 童子の体温は常に高いという。そのせいだろうか。
 触れた部分は驚くほど柔らかくて、熱かった。






 それはもう10年も昔のこと。けれども10年経っても一瞬一瞬を鮮明に思い出すことができる。
 卓は当時、光り輝く高校生だった。
 靴箱を開ければ大量の手紙が落ちてくるのが日課。毎日違う女の子達に一緒に帰ろうと誘われた。
 今はもう手紙が大量に出てくる靴箱なんて無いし、家に居っぱなしのおかげで帰路に付き合ってくれる女性は誰一人居ない。
 当時と唯一変わらないのは、恋人が居ないままなことくらいだろう。



「貴女は…まだ覚えているでしょうか。」



 書庫の整理中、偶然出てきた昔の参考書を見た瞬間思い出した、一つの記憶。
 10年経って再び卓が住む村に戻ってきた少女は当時の幼さを失い、大人の女性に近づいていた。
 呼び方も「卓お兄ちゃん」からただの「卓さん」に変わっていた。
 そもそも卓のことを完全に忘れていた。
 だからその時点で覚えているわけが無いと分かっているのに。



「今更あのときの言葉が有効かどうかを尋ねるのは…格好悪いですよね。」



 あの時少女を手中におさめておかなかったことを、10年経った今になって後悔するとは。
 当然ながらそんなこと知る由も無い10年前の自分に対して、今更愚痴るのであった。





:::::::::::::::::::::::::::::




高校時代に手中におさめておこうとしたら究極のロリコンになってしまいますね。
うー、スランプです(沈)

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