2007'09.08.Sat
家に帰り着くなり家族への挨拶もそこそこに風呂場へ直行する。
心臓が騒いで、全身の毛穴から嫌な汗が噴出していた。
それが彼女の家に近づいたせいなのは明白だ。
黒いヘドロのようなものが全身にまとわり付いているような気がして、真弘は制服のままシャワーを頭から浴びる。
最初は冷たい水が降りかかって、心臓を鷲づかみされたように体の中心がキュッとなる。
普段はそれが嫌だから暫くの間暖かくなるまで流しっぱなしにするのだが、今日はそんな余裕が無かった。
一刻も早く、この全身にまとわり付く何かを洗い流したい。
だんだんと温いお湯が出てきて、絡みつく気持ち悪さが流れ落ちていく気がした。
震えていた体が落ち着きを取り戻す。
けれども、胸を締め付ける苦しさは消えない。
「くそっ、なんで今頃…!!」
思い出すのは、視界を彩る紅い色。
そして幼い少女の絶望に満ちた、緋色の涙。
何度も忘れようとした。何度も、何度も…。
けれどもあの日の記憶は、決して消えることなく、今でも時々胸を苦しめる。
それは罪の刻印なのだと思う。
なぜなら、自分が今こうして生きていること自体が罪だから。
「…くそっ…!」
やるせない悲しみと後悔をこめて、拳を壁に打ち付ける。
不意に、目元が熱くなった。
拳を打ち付けた手が痛かったせいだ。そう自分に言い聞かせる。
<彼女>のことで涙を流すのは決して許されない。涙は流してはいけない。
なぜなら加害者は自分だからだ。
今はもう泣くことが出来ない被害者を置いて、自分が泣くことは許されない。
胸を何かが強く締め付ける。きっと呪いだ。鴉取家に生まれた自分には決して解けない契約という名の呪いがかかっている。
自分ではどうすることも出来ないのが悔しくて怖くて悲しくて、でもそれ以上に自分の存在が許せなくて、真弘はもう一度壁を拳で打ち付けた。
流れ落ちた涙は、拳の痛みのせいだと、言い訳するために。
:::::::::::::::::::::::::
夢主に鞄を届ける役目を祐一に頼んだあとのこと。
意味が分からない。
心臓が騒いで、全身の毛穴から嫌な汗が噴出していた。
それが彼女の家に近づいたせいなのは明白だ。
黒いヘドロのようなものが全身にまとわり付いているような気がして、真弘は制服のままシャワーを頭から浴びる。
最初は冷たい水が降りかかって、心臓を鷲づかみされたように体の中心がキュッとなる。
普段はそれが嫌だから暫くの間暖かくなるまで流しっぱなしにするのだが、今日はそんな余裕が無かった。
一刻も早く、この全身にまとわり付く何かを洗い流したい。
だんだんと温いお湯が出てきて、絡みつく気持ち悪さが流れ落ちていく気がした。
震えていた体が落ち着きを取り戻す。
けれども、胸を締め付ける苦しさは消えない。
「くそっ、なんで今頃…!!」
思い出すのは、視界を彩る紅い色。
そして幼い少女の絶望に満ちた、緋色の涙。
何度も忘れようとした。何度も、何度も…。
けれどもあの日の記憶は、決して消えることなく、今でも時々胸を苦しめる。
それは罪の刻印なのだと思う。
なぜなら、自分が今こうして生きていること自体が罪だから。
「…くそっ…!」
やるせない悲しみと後悔をこめて、拳を壁に打ち付ける。
不意に、目元が熱くなった。
拳を打ち付けた手が痛かったせいだ。そう自分に言い聞かせる。
<彼女>のことで涙を流すのは決して許されない。涙は流してはいけない。
なぜなら加害者は自分だからだ。
今はもう泣くことが出来ない被害者を置いて、自分が泣くことは許されない。
胸を何かが強く締め付ける。きっと呪いだ。鴉取家に生まれた自分には決して解けない契約という名の呪いがかかっている。
自分ではどうすることも出来ないのが悔しくて怖くて悲しくて、でもそれ以上に自分の存在が許せなくて、真弘はもう一度壁を拳で打ち付けた。
流れ落ちた涙は、拳の痛みのせいだと、言い訳するために。
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夢主に鞄を届ける役目を祐一に頼んだあとのこと。
意味が分からない。
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