2009'12.13.Sun
「ねぇ、何か欲しいものとかある?」
いつものように遊びに来た幼馴染みの部屋のベッドの上で、ナギはcamcam(売り上げNo1の女性ファッション誌のこと)のページをめくりながらなんとなくそんなことを口にした。雑誌の中のモデル達は可愛いコートに身を包み、長い髪をくるくると巻いてご自慢の美しさを披露している。その中の一人が身につけているカチューシャは今働いている雑貨屋がつい最近仕入れたものと同じデザインだった。明日仕事に行ったら、在庫発注を少し多めにしとこうと考えつつ、どうやったらこんな風にお肌つるつるで綺麗になれるんだろう、と最近寒さで荒れがちな頬をさすっていると、なにかの崩れ落ちるような音が聞こえてきた。その音が少し尋常じゃなかったので雑誌から顔を上げて音がしたほうを見てみれば、先ほど質問を投げかけた相手がパソコン用の椅子からひっくり転げて落ちていた。
「大丈夫?」
側まで行ってみてみると、レッドは驚愕に目を見開いて天上をガン見している。何か居るのだろうかと思って天井を見上げてみても、そこには何もなかった。視線からしてみても、ベッドの上のゴーストっぽい染みを見て驚愕しているわけでもなさそうだ。そもそも今更アレを見て驚くなど、この部屋に十数年寝起きしてきたレッドにはありえないことだろう。
レッド、レッドさん、レッドく~ん、おーい。
目の前で手をヒラヒラと振ってみても、レッドは回復の兆しを見せない。これは本当に打ち所が悪かったかと急激に心配になって携帯を取り出そうと手をポケットに突っ込もうとしたその時。
「ナギ、今なんていった?」
化け物を見たように固まっていた目が、ぎょろりとナギの顔を見る。それは一種のホラーシーンのように思えなくもなく、ナギは少しばかりの恐怖を感じた。瞳が赤い彼のことだから、なおさらその恐さが際立っている。
「えっと、大丈夫って聞いたんだけど。」
「違う、その前。」
「その前?」
大丈夫の前は一体何を言ったんだっけ。確か雑誌を読んでいて、なんとなく何かを口にしたような…。
結構無意識に言っていたのだろう。言葉はなかなか思い当たらない。レッドはよいしょっと勢いをつけて上体を起こすと、打ち付けたであろう頭を抑えながら言った。
「欲しいものがある?って聞こえた気がしたんだけど、俺の聞き間違いか。」
「あー、それ言った言った。確かに言ったわ。」
最近物忘れが激しくって、嫌になっちゃうよね。
困ったように笑って見せたナギの肩を、むんずとレッドの両手が正面から掴みかかる。痛いわけではないが、ちょっとやそっとじゃその拘束からは逃れられなさそうな力は込められていて、普段そんな風に扱われることがない分、ナギはたじろいだ。そのことに気付いているのかいないのか、レッドはグイと顔を近づけて真剣な面持ちで尋ねてくる。
「それって何でもいいのか?」
「うん。」
うなづいた後で、ナギはしまったと思った。何でもいいなんてことを言ってしまったら、引きこもりを初めて早数年の若干ヤミ気味少年のこと、何を要求してくるかわからない。さすがに臓物が欲しいとは言わないだろうが、もしかしたら髪の毛の10本でも欲しいといって気付かぬ間に通販で買った藁人形にそれを仕込み、笑顔で夜な夜な五寸釘で打ち付けたりするかもしれない。
「…前言撤回…一応良心をフルに活動させて私にしんどくない程度のものをお願いします…。」
金銭的な面でも、精神的な面においても。
付け足された条件にレッドは少しだけ落胆したようだったが、それでもめげずに何がいいだろうかと腕を組んで考え始める。
「お財布的なことを考えたら、上限は2万までだと助かるわ。」
年末は普段の月に比べると出費が多い。仕事先や高校時代の知り合い、そのほかも含めると既に忘年会の予定は4件詰まっていた。ナギは酒をあまり飲まない分、会費に含まれた飲み放題の料金を捨てに行っているようなものだが、集まって騒ぐのは嫌いではない。付き合いを大切にしたいから、全部に参加の予定だ。
「でもなんで急に。」
「ほら、クリスマスもうすぐでしょ。」
「そうなのか?」
「そうなの。」
ほら見て、今日は12月13日、と壁にかかったカレンダーを指差したナギは、印字された3月の文字にアレっと首を傾げる。世間は今12月のはずなのに、なんでこの幼馴染みのカレンダーは春の月のまま止まっているのか。動揺を見せるナギに、レッドはニコっと笑みを向ける。
「いい事教えてあげるよナギ。引きこもってると今日が何月で何日で何曜日とか、どうでもよくなってくるんだよ。だからカレンダーはめくらない。ちなみにあれは3年前のカレンダーだ。オレも3年ぶりにあそこにかかってあることに気付いた。」
「そ、そうなんだ…。」
部屋の片付けはそこそこしているのに、そういうところには目が行かないのだろうか。うろたえるナギを傍目に、レッドは「うーんうーん」とお手洗の便座に座って小1時間唸る一家の大黒柱のような顔をしてみせる。そんなに真剣でなくてもいいだろうに、悩みすぎて綺麗な黒髪がはげたら大変だと、その頭に手を乗せてわしゃわしゃっとすると、突然パソコンからけたたましいベルの音がし始める。昔の家にある黒電話の音に近い。その音が何なのかはナギも知っている。スカイス(作中においてPCを使いネット回線を介して電話をするソフトのこと)の着信音だ。
「こんな真剣な時に一体誰だよ。」
たかがクリスマスプレゼントを考えるのにそこまで真剣にならなくてもいいだろうに。ツッコミを飲み込んだナギの肩から手を放したレッドは、立ち上がって画面を確認し、アレっと驚きの声をあげた。
「
************
没
現代verだとなんか思うようにかけない。
いつものように遊びに来た幼馴染みの部屋のベッドの上で、ナギはcamcam(売り上げNo1の女性ファッション誌のこと)のページをめくりながらなんとなくそんなことを口にした。雑誌の中のモデル達は可愛いコートに身を包み、長い髪をくるくると巻いてご自慢の美しさを披露している。その中の一人が身につけているカチューシャは今働いている雑貨屋がつい最近仕入れたものと同じデザインだった。明日仕事に行ったら、在庫発注を少し多めにしとこうと考えつつ、どうやったらこんな風にお肌つるつるで綺麗になれるんだろう、と最近寒さで荒れがちな頬をさすっていると、なにかの崩れ落ちるような音が聞こえてきた。その音が少し尋常じゃなかったので雑誌から顔を上げて音がしたほうを見てみれば、先ほど質問を投げかけた相手がパソコン用の椅子からひっくり転げて落ちていた。
「大丈夫?」
側まで行ってみてみると、レッドは驚愕に目を見開いて天上をガン見している。何か居るのだろうかと思って天井を見上げてみても、そこには何もなかった。視線からしてみても、ベッドの上のゴーストっぽい染みを見て驚愕しているわけでもなさそうだ。そもそも今更アレを見て驚くなど、この部屋に十数年寝起きしてきたレッドにはありえないことだろう。
レッド、レッドさん、レッドく~ん、おーい。
目の前で手をヒラヒラと振ってみても、レッドは回復の兆しを見せない。これは本当に打ち所が悪かったかと急激に心配になって携帯を取り出そうと手をポケットに突っ込もうとしたその時。
「ナギ、今なんていった?」
化け物を見たように固まっていた目が、ぎょろりとナギの顔を見る。それは一種のホラーシーンのように思えなくもなく、ナギは少しばかりの恐怖を感じた。瞳が赤い彼のことだから、なおさらその恐さが際立っている。
「えっと、大丈夫って聞いたんだけど。」
「違う、その前。」
「その前?」
大丈夫の前は一体何を言ったんだっけ。確か雑誌を読んでいて、なんとなく何かを口にしたような…。
結構無意識に言っていたのだろう。言葉はなかなか思い当たらない。レッドはよいしょっと勢いをつけて上体を起こすと、打ち付けたであろう頭を抑えながら言った。
「欲しいものがある?って聞こえた気がしたんだけど、俺の聞き間違いか。」
「あー、それ言った言った。確かに言ったわ。」
最近物忘れが激しくって、嫌になっちゃうよね。
困ったように笑って見せたナギの肩を、むんずとレッドの両手が正面から掴みかかる。痛いわけではないが、ちょっとやそっとじゃその拘束からは逃れられなさそうな力は込められていて、普段そんな風に扱われることがない分、ナギはたじろいだ。そのことに気付いているのかいないのか、レッドはグイと顔を近づけて真剣な面持ちで尋ねてくる。
「それって何でもいいのか?」
「うん。」
うなづいた後で、ナギはしまったと思った。何でもいいなんてことを言ってしまったら、引きこもりを初めて早数年の若干ヤミ気味少年のこと、何を要求してくるかわからない。さすがに臓物が欲しいとは言わないだろうが、もしかしたら髪の毛の10本でも欲しいといって気付かぬ間に通販で買った藁人形にそれを仕込み、笑顔で夜な夜な五寸釘で打ち付けたりするかもしれない。
「…前言撤回…一応良心をフルに活動させて私にしんどくない程度のものをお願いします…。」
金銭的な面でも、精神的な面においても。
付け足された条件にレッドは少しだけ落胆したようだったが、それでもめげずに何がいいだろうかと腕を組んで考え始める。
「お財布的なことを考えたら、上限は2万までだと助かるわ。」
年末は普段の月に比べると出費が多い。仕事先や高校時代の知り合い、そのほかも含めると既に忘年会の予定は4件詰まっていた。ナギは酒をあまり飲まない分、会費に含まれた飲み放題の料金を捨てに行っているようなものだが、集まって騒ぐのは嫌いではない。付き合いを大切にしたいから、全部に参加の予定だ。
「でもなんで急に。」
「ほら、クリスマスもうすぐでしょ。」
「そうなのか?」
「そうなの。」
ほら見て、今日は12月13日、と壁にかかったカレンダーを指差したナギは、印字された3月の文字にアレっと首を傾げる。世間は今12月のはずなのに、なんでこの幼馴染みのカレンダーは春の月のまま止まっているのか。動揺を見せるナギに、レッドはニコっと笑みを向ける。
「いい事教えてあげるよナギ。引きこもってると今日が何月で何日で何曜日とか、どうでもよくなってくるんだよ。だからカレンダーはめくらない。ちなみにあれは3年前のカレンダーだ。オレも3年ぶりにあそこにかかってあることに気付いた。」
「そ、そうなんだ…。」
部屋の片付けはそこそこしているのに、そういうところには目が行かないのだろうか。うろたえるナギを傍目に、レッドは「うーんうーん」とお手洗の便座に座って小1時間唸る一家の大黒柱のような顔をしてみせる。そんなに真剣でなくてもいいだろうに、悩みすぎて綺麗な黒髪がはげたら大変だと、その頭に手を乗せてわしゃわしゃっとすると、突然パソコンからけたたましいベルの音がし始める。昔の家にある黒電話の音に近い。その音が何なのかはナギも知っている。スカイス(作中においてPCを使いネット回線を介して電話をするソフトのこと)の着信音だ。
「こんな真剣な時に一体誰だよ。」
たかがクリスマスプレゼントを考えるのにそこまで真剣にならなくてもいいだろうに。ツッコミを飲み込んだナギの肩から手を放したレッドは、立ち上がって画面を確認し、アレっと驚きの声をあげた。
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現代verだとなんか思うようにかけない。
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