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欠片むすび

ポケスペのSSや日記などを書いていこうと思います。

2024'05.18.Sat
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2009'12.12.Sat
 踏み出した足が深く積もった雪道に深い穴を作る。つま先がむき出しになったミュールは当然雪を通し、その結果タイツの足先の部分が盛大に濡れた。雪用のブーツを履いていないことを後悔するが、今から取りに戻るのも時間の無駄だと首を振る。仕方ないから、頼れる相棒をボールから出してその背に乗った。ふかふかの毛に包まれた相棒は、零下の中でもちっとも寒く無さそうだ。



「ウインディ、レッドが何処にいるか分かる?」



 ナギの問いかけに、ウインディは鼻を空に向けて数度ヒクヒクさせた。ポケモンのなかでも格別に嗅覚がいいウィンディは、たとえ辺りが雪一面だろうが、一度嗅いだことがある匂いを敏感にかぎ分ける。粉雪に紛れた主の探し人の香りを見つけたウインディは、指示を待たずしてその毛に覆われた太い後ろ足で雪を蹴った。大きな体躯は雪をかきわけ、ズイズイと先に進んでいく。ナギは振り落とされないようにしっかりと首に抱きつきながら山頂を見上げた。頂は白い煙の中に覆われて見えない。吹雪いているのは明らかだ。
 今日こうしてシロガネ山を訪れたのは、当初の予定にはなかったことだった。だから靴は完全に雪山とは無縁のミュールを履いているし、上着は防寒性の低い薄手のトレンチコート、その下は丈が短いニットワンピースを着ている。ウインディの温かい体に掴まっていなければ、ものの数秒で体の芯まで凍ってしまうような軽装だ。ブルーと一緒にタマムシデパートでショッピングをするだけの予定だったから、外を出歩くことも少なく、そこまで重装備でなくてもいいだろうと思っての服装だった。しかし、デパートでレッドに似合いそうなマフラーを見つけて買ってしまい、すぐ届けたかったのでその足で来たのだ。だが、比較的暖かいグレンタウンで育ったナギに雪山の寒さは致命的とも言える。



「寒いね…。」



 無意識に寒さに対する言葉が口をついて出ていた。ウインディは心配するように背の上の主を見る。自分は炎ポケモン、その身に炎を宿しているから、少々毛が無くなろうが寒さには強い。だからこの毛皮を分けることが出来たらいいのに―――その気持ちに反応するように、ナギの腰のボールがカタカタと揺れた。ナギが開閉スイッチを押す前に、自らの意思で白い煙と共に外に出てくる。



「イーブイ?」



 首元を白いふさふさの毛に覆われたイーブイが、自分に抱きつけといわんばかりにナギの腕の中に鎮座した。途端に茶色いボディが燃えるような緋色に染まり、炎のような体毛に変化する。このイーブイは遺伝子操作を受けて作られた特殊な固体故、己の意思でイーブイ族に体質を変化できる。今イーブイは、炎袋をその身に宿すブースターに変化し、ナギを暖めようとしていた。



「ありがとう。助かるわ。」



 ぎゅっと抱きしめればイーブイは嬉しそうにキューと鳴いた。とても暖かい。これなら凍えることなくレッドの元までたどり着けるだろう。ウインディに足元を、イーブイに上半身を暖めてもらいながら、雪深い山肌を進み続ける。てっきり山頂を目指すのかと思いきや、ウインディは山頂への道を逸れて森に向かった。クリスマスによく目にする木の合間をぬって行けば、黄色い背中が白いカーペットの上にちょこんと座っていた。レッドのピカであるのは尻尾の傷で一目瞭然だ。体重が軽いためだろう、体はほんの少ししか雪に沈んでいない。



「ピカ!」



 ナギの呼び声にピカは大きく耳を揺らし、振り向く。ピカピ!と鳴いたと思ったら、雪の上を猛烈なスピードで駆けてウインディの頭の上に飛び乗り、再会を喜ぶようにナギの頬に己の頬を擦り付けた。



「ピッピカ~。」



 言葉はわからないが歓迎されているのはピカの態度と顔つきで分かる。ピカが居るということはレッドも必ず近くにいるはずだ。ナギが尋ねるより先に、ピカはウインディから飛び降りて、白い雪の上を小さな足跡をつけながら木々の奥へ駆けていった。



「ピカ、どうしたんだよ。」



 聞きなれた声がピカが走っていったほうから聞こえ、ナギはほっとする。レッドの声に違いない。レッドは雪を掻き分けながらピカを頭に乗せてやってくる。その瞳がナギを捉えた瞬間、これでもかというくらい嬉しそうな笑顔を見せた。ずんずんと雪をかき、ウインディの側まで来てナギに両手を伸ばす。イーブイが二人の邪魔をしないように、ぴょんと地面に下りた。ナギはレッドの手に掴まり、ウインディの背から雪の上に飛び降りる。足が雪を深くえぐり、その身はずっぽりと雪に沈んだ。やはり成人に近い人間の体重では、ピカチュウやイーブイのように雪に受け止めてはもらえないらしい。



「ナギ、きてくれたんだ。」
「久しぶりだね。」



 *****************






明日は嫁とデートなのでここまで!

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2009'12.11.Fri
電撃ピカチュウというコミックをご存知でしょうか。

綺麗なお姉さんが大好きなサトシと、永遠のライバルのナルシーシゲル、そしてナイスバディなカスミといつも何かを食べているタケシ、少年誌にしてはやたらにセクシーなお姉さま方がたくさん出てくるポケモンの漫画です。

数年ぶり(下手をしたら十数年かもしれない)に読んだのですが、今になってそのシナリオ一つ一つの完成度があまりにも高いことに気付き、驚きました。

ギャグ展開のノリであっても、最終的には道徳的教育に導くような展開につながっています。読後のほっとした感動を与えてくれる作品です。出版社側の都合なのか中途半端な終り方をしているのですが…。
もし叶うなら続きを読んでみたいです。
特にサトシとシゲルの二人旅の辺りを、kwsk。



管理人は夢書きであると同時に重度の腐女子であったりもします。
夢は健全と不埒の合間を行き交う甘酸っぱい駆け引きを書くのが好きですが、BL小説だととことんハードなエロを書きたいタイプです。

あー、レッド総受け書き散らしたいなぁ…。
グリレ最高!(-ω-)
変態サカレも好きだよ!
むしろイエローが実は超腹黒い男の子でグリレ←イエとかもどうですかね!

夢サイトとして運営している以上、BLネタは別サイトを作るべきなのでしょうか…。んー。悩みます。

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2009'12.11.Fri
 小さな花が窓辺の小瓶に活けてある。
 そんな小粋なことをするのは、目の前のトンガリ少年ではなくて彼のお姉さんの仕業だろう。「可愛い花だね」といえば、案の定少年は訝しげに花瓶を見つめて、「さっきまではなかったはずなのに」と首をかしげた。やはりこの花は彼の姉による演出と思っていいらしい。

 このトンガリ頭の少年の姉はいろいろな花言葉を知っていて、聞けば大抵の花言葉を答えれるほど花に詳しいし、時折自分宅の庭で自ら花を育てていることがある。
 小さきものにも愛情を注げる優しさを持っているのだろう。たまに包んだ花を弟に持たせて持ってきてくれることがあるから、人に対しても優しいのは確実だ。事実家にお邪魔する際に何度か会う機会があったが、どんなときも優しく丁寧に対応してくれる。
 姉が居ないシロにとって、彼女はまるで本当の姉のような存在だった。好きかどうかと問われれば、迷うことなく好きだと言える。ある意味崇拝するほど懐いてるわけだが、残念ながら純粋無垢なシロは、彼女がシロを見るたびに己の弟といちゃついてるシーンを妄想しては、実際に妹になってくれればいいのに切に願っている事実を知るよしもない。



「それにしても、まさか大学が急にインフルエンザの影響で2週間休校になるなんて思いもしなかった。」



 男性が主にしては小奇麗な部屋で、シロは朝送られてきた友達からのメールの内容を嬉々として読み上げた。今世間を騒がせている新型インフルエンザの大学における発症者がとうとう規定値に達し、2週間の休校になった。突然出来た14日という暇な時間に嬉しくなり、昔住んでいた町の幼馴染みに連絡を取って遊びにきたわけだ。何日でも泊まっていいとのことだったので、4日分の下着と衣服と化粧品一式を詰めてきた鞄はパンパンだったが、すぐ近くの町まで迎に来てくれた幼馴染みが再会するなり持ってくれたので、道中その重さに参ることはなかった。

 久々の真白<まさら>町、久々の幼馴染みの家、久々の幼馴染みの部屋。不思議と心はわくわくし、もともと溌剌とした性格もあいまってテンションも軽快なものとなる。カーペットの上に置かれた白いクッションが昔からシロのお気に入りであり定位置で、それは幼馴染みも心得ていた。ずっと昔あらある年代物だからそれなりに汚れてボロくなってしまっているが、今なお捨てずに取ってあるのはそのためだ。その向かい、ガラス机を挟んだ正面には、汚れは目立たないものの、年代を感じさせるほど色あせた黒いクッションが置いてある。そこがシロが部屋に来たときに少年が座る場所だった。けれども彼はすぐには座らず、一旦シロの鞄を肩から下ろすと、少しの間廊下側の何の飾りも無い殺風景な壁を見て、小さく息をつきながらドアを開けた。



「姉さん、何してるんだ。」
「あらグリーン、シロちゃんが来てるって聞いたからご挨拶しておこうかしらと思って。」
「だからといって壁にへばりつく必要性は無いと思うんだが。っていうか手にある丸まった雑誌は何だ。」
「通路をゴキブリが歩いていたから、恐くて出来るだけ避けていたの。コレはヤツ撃退用の武器よ。」
「仕留めたのか?」
『イーブイが咥えてどこかに持って言っちゃったわ。』
「アイツ…。」



 幼馴染みことグリーンが対話している人物は間違いなく彼の姉であるナナミだ。シロはすぐさまクッションから跳ねるように立ち上がってドアに近付き、グリーンの腕の下からヒョコリと廊下を窺った。敬愛するお姉さまに挨拶しなければ気がすまない。けれども廊下に居たナナミはなんとも奇妙なポーズで固まっていた。先ほどの会話の流れからすると、シロに挨拶をしに2階のグリーンの部屋前まで来たはいいが、そこでうっかりゴキブリに出会ってしまったらしい。逃げ腰になりつつも手に持っていた雑誌『月刊花畑』で撃退しようとしたところ、イーブイという名のゴールデンレトリバーが咥えて持っていってしまったようだ。イーブイはグリーンにとても懐いていて、所構わず舐めようとしていたはずだ。その口がゴキブリを咥えたとなれば、グリーンも思わず嫌な顔をせずにはいられないのだろう。案の定、グリーンは極限まで眉を顰めている。



「」



**************


こっちで打ち込んでいたらおかしくなったので、途中からメモにコピーして書きました。
起きたらグリーンヒロインで変換できるようにしてうpします。
とんでもなく時間がかかってしまった・・・。

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2009'12.09.Wed
布団の上に投げ出したDSのスピーカーが、敗戦の音を空しく部屋の中に響かせた。
方やパソコン前の回転椅子に座った少年のDSからは、勝利のファンファーレが鳴り響く。



「んー、勝てないなぁ。」



データ上で一戦を交え終わったナギは、ボヤキながらベッド上にうつぶせていた身をクルリと反転させて天上を見た。
自分のものではない布団から、既に嗅ぎなれてしまった香りがして、ほっとする。
ゴーストにそっくりな天上の染みも、自分の部屋のものでは無いというのに、随分見慣れてしまった。
昔はあれが本当のお化けに見えて、よく怯えていたというのに。



「レベル差の問題だよ。オレのピカチュウのレベル88だし。」



椅子の背もたれに限界までもたれて座っていた少年が、背筋正しく座りなおしてベッドの上のナギを見る。
少年のDSは既に閉じてあった。
それは、再戦する意図がないという意思表示。
今晩こそ倒してやると意気込んできたものだから、ナギは落胆した。
オンラインゲーム『ポケットモンスター』の世界で<原点にして頂点>と呼ばれる幼馴染みの彼は、1日に1回しか戦いを挑ませてくれない。



「まだレベル80が一匹も居ない上に、レベル10の秘伝技専用ミュウをPTに入れて挑んでくる辺り、チャレンジャーだよな。」
「だって、そっちがロッククライム使わないと行けない場所に留まってるのがいけないんでしょう!育ててる子でロッククライム覚えられる子居なかったんだもん。ミュウなら全ての技マシン覚えられるから…空も飛べるし滝も上れるし、岩も滑れる!1匹でとってもお得でしょ。」
「伝説のポケモンをそんな風に使うなんて、昔だったら非難の嵐だよ。」
「今はマックに行けばDS1台につき1匹貰えちゃうからいいの!」
「自宅に居ても受け取れるけどね。」
「嘘?!」
「本当。まさかわざわざマックに行ったの?」
「うん。」



大きく頷くと、少年は椅子をクルリと回転させてナギに背を向けた。
パソコンの画面を見ているようにも見えるが、その肩は小さく揺れている。
声を殺して笑っているのは明白だった。
その仕草にカチンときて、ナギは静かにベッドから立ち上がる。
抜き足差し足忍び足、少年の背後にそっと立ち―――



「ナギ、画面に映ってるから丸分かりだよ。」
「えっ。」



椅子をひっくり返してやろうと考えていたナギは、振り向かずに言い切る少年の言葉にギクッと身をすくませる。
言われてみれば確かに、ピカチュウだらけの壁紙を背景にしたPC画面の表面に、うっすらとだが少年とその背後に立つナギの姿が映りこんでいた。
悪戯をする前にばれてしまった子どものような気持ちになり、思わず体が硬直する。
その間、少年は静かに椅子を回転させて、すぐ背後に迫っていたナギを見上げる。
黒髪の隙間から覗く瞳がにっこりと微笑んでいるが、実のところ笑っていないことをナギは嫌というほど知っていた。
コレはまずい。ヤバイ。危険だ。
今すぐ逃げなければロクなことにならない。
頭の中に警鐘が鳴り響く。
けれども足が、体が、まるで縫いとめられたように動かない。
まさか、この幼馴染みは現実に「くろいまなざし」が使えるというのか。
「だるまさんがころんだ」の状態で硬直してしまったナギの腰に、少年の両腕がそっと回る。
そのままクイと引き寄せられ、少年の両膝に跨る格好になった。
スカートが捲れあがった太ももに、少年の履きふるした柔らかなジーンズの布が擦れ、こそばゆい。
近い距離と、息が詰まるような圧迫感。
途端に体温が上昇するのを感じる。



「ねぇ、ナギ。今日母さん仕事先の慰安旅行で居ないんだ。」
「そ、そう。寂しいね。」
「ナギが居てくれたら寂しくないよ。…この家、オレたち二人だけだね。」
「あああああそこにゴーストっぽい影が。」
「ただの染みだよ。」



話を逸らそうと天井の染みを指差してみるものの、一蹴される。
今はくろいまなざし発動中の瞳と視線を合わせるのが恐くて明後日のほうを見れば、



「こっち見て。」



伸びてきた手に顎をつかまれ、グイと顔の向きを直された。
思いのほか目前に赤い瞳があって、息を飲む。
幼馴染みはこの赤い瞳を気にして家から出ない。いわゆる引きこもりだ。
けれどもナギはこの瞳が好きだった。
幼い頃から少年を被虐の的として成り立たせてきたこの瞳が、静かに燃える炎のようで好きだった。
彼自身それを知っているからこそ、真正面からナギを見る。接近することを許す。



「顔が赤くなってるよ。熱?」



顎をつかんでいた手が額の上にかぶさる。
それだけでは体温の判断がつかなかったのか、逆の手で己の前髪を掻き揚げ額を出すと、ナギの火照った額に押し付けた。
これでもかというくらいに顔同士が近づき、ナギはいよいよ混乱しはじめる。
こんなにも二人の距離が近づくのは、昔から全く無かったわけではない。
幼稚園以前から幼馴染をやっているのだ、それこそ一緒にお風呂に入ったり、同じ布団で寝たことも数多い。
けれども、大人と呼べるに近い年齢になってからはどうだったか。
時々夜に二人でゲーム大会を開いては、真っ先にナギが寝て、気づいたら少年のベッドの中で背中合わせに寝ていることは何度かあった。
だが向き合ってこんなにまで接近することなど、ここ数年無かったような気がする。



「え…っと…、その…。」



声が上ずる。言葉が思い当たらない。
少し位置をずらせばお互いの唇が触れ合うような、繊細な距離。
無意識に吐息が震える。



「頬は熱いけど、額の温度は正常だよ。熱とは違うみたいだ。暖房に当たりすぎたのか?」



目と目の距離が、すっと遠のく。
腰の拘束が解かれ、やんわりと肩を押され、少年の膝の上から退く。
少年は椅子から立ち上がり、壁にかけたエアコンのリモコンを操作して、「そんなに温度は高くないんだけど…」と呟いた。
まるで何事もなかったかのように振舞う姿が憎らしく、かといって事実何事もなかったわけで、一人だけどぎまぎしていたことに、ナギは猛烈な羞恥を覚える。



「ちょ、ちょっと風当たってくるね!」



密室の中に二人だけでいるのは、この上なく恥ずかしいから。
温度を下げ終えた少年の傍らをすり抜けて、ドアを蹴破るように廊下へ飛び出した。
勝手知ったる他人の家とはこのことだ。
ろくに前も見ず、ただひたすらに廊下を走って階段を駆け下り、豆電球が照らし出す薄暗いリビングを通り過ぎて再びドアを蹴破るように外へ出る。
一瞬にして冷たい夜風が身を包み、吐き出した息が白く闇に広がった。
空には、満天の星。
夜色のカーテンに無数に散りばめられた白い星たちの中に、異彩を放つがごとく赤く煌く星が見え、まるで幼馴染みの瞳のようだと思った。
思い出すのは、ぐっと近くに見えた、赤の双眸。触れ合う額の温もり。
こんなにも冷たい夜風に包まれているというのに、ナギの頬は、まだ熱い。



玄関を飛び出したナギが空を見上げて一向に冷めない火照りを戻そうとしている頃。
ナギが飛び出していく原因を作った少年は、思いきりベッドの上にダイブした。
かれこれ十数年使ってきたベッドは、大きく軋んで、けれどもそう重くない少年の体を受け止める。
少年は、耳の奥がズキリと痛むのを感じた。
早まった血流が、細い血管を無理矢理押し広げているからだ。
胸の鼓動は、まるで100メートル走をした直後のように早い。



ナギを己の膝に乗せたとき、本当は体が密着するほど抱き寄せて、頭の後ろに手を回して、その唇に己の唇を這わせたかった。
けれども、あんなに可愛い顔で不安そうに見つめられたら、そんな乱暴な事、出来るはずもなく。



「本当、いつまでたってもナギには勝てないや…。」



淡い恋心を抱き続けて早十数年。
お互い誰よりも親しく近しい確証はあるというのに、どうしても決め手の一歩が踏み出せない。
気持ちを暴露することで、今の幼馴染という特権ある関係性を壊すのが恐かった。
だけど、理性に歯止めをかけるのもそろそろ限界が近いようだ。



「ナギ、好きだよ。」



家の外の彼女に、この声が届くことは無いけれども。
押さえ切れない想いを、ついさっきまで彼女が居たベッドのシーツに呟く。
くしゃ、と握り締めて皺になったシーツからは、愛しい少女の香りがした。

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2009'12.04.Fri
「・・・・・だから、・・・・で、なのよ。」

「うん。」

「でね、・・・・が、急に・・・・で、・・・ったの!」

「ふーん。」

「で、・・・・・・・『・・・・が好き』ってナギが」

「ごめん、聞こえなかった。ナギが何だって!?」

「アンタ、私の話全く聞いてなかったわね。」



だって仕方ない。
頭の中はいつも彼女のことばかり。
耳から入る情報も、彼女以外のことは全く鼓膜に引っかからないんだ。




レッドとブルーの語らい。
殆どブルーが一人で話してて、レッドはヒロインのことを考えてロクに話を聞いて無いかと。

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