忍者ブログ

欠片むすび

ポケスペのSSや日記などを書いていこうと思います。

2024'05.18.Sat
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009'12.18.Fri
 その日はとても寒かった。
 AM7:00と右上に表示されたテレビ画面の中で、お天気お姉さんが年末一番の冷え込みであることを大げさに語っている。言われてみれば確かにいつもより寒い。レッドは手元に置いたエアコンのリモコンで室内の温度を30度に設定する。さっきよりも暖かい空気を吐き出し始めたエアコンを見て隣に座るナギはぎょっとしたようだった。ナギは滅多に暖房を使わないから、こうして平気でガンガン温度を上げることが信じられないのだろう。うちに来てるときくらいは気兼ねせずにゆっくり温もっていってね、と頭の中にニヤニヤ動画(リアルタイムに視聴者がコメントを書き込める機能がついた集合動画サイト)で人気のとあるキャラクターの顔が思い浮かぶ。
 年末一番の冷え込みのせいか、家を車で出る人が相次いで交通機関は渋滞の極みらしい。雪は降っていないが路面が凍結しているおそれがあるため、皆一様に運転が慎重で、余計長蛇の列を作る羽目になっている、とお天気お姉さんに代わって気象予報士のおじさんが付け加えていた。



「あーあ、朝から皆さんご苦労なことだなぁ。」



 ―――まぁ自分には関係ないんだけど。
 レッドは腹のうちでそう思いながら茶碗に盛られた白米を左の手に持った箸で口に運んだ。今は両利きだがもともと左利きだから、歯を磨いたりご飯を食べたりといった日常生活のちょっとした動作は左手で行う癖が抜けていない。



「うちは田舎だからまだいいほうだよね。」
「ってかナギ車持ってないから関係なくない?」
「それはそうだけど、ほら、レッドのおばちゃんは車通勤じゃん。今頃ニビの手前辺りで渋滞に巻き込まれてるんじゃないかな。」
「ああ、そうかもな。」



 隣の椅子に腰掛けたナギは目の下にクマを作った顔でレッドの母親を心配するような発言をする。オレはどちらかというと寝不足のナギが心配だよ、とレッドは口に出さず心の中で呟いた。

 有給の調整で急な休みが貰えたと喜びに浮き足だつナギがDS片手に家に転がり込んできたのは昨晩のこと。いつもならよほど遅くても5時ごろにはDSの電源をつけっぱなしで寝るナギが、久々に一睡もすることなく朝のこの時間まで起きている。レッドにしてみればこの時間帯まで起きているのは当たり前のことだが、普段寝ているはずの時間に起きていたナギの体は大きな負担を抱えているはずだ。レッドはもう一度テレビ画面右上の時計を見た。AM7:03。まださっきから3分しか経ってない。が、一刻もナギを床に就かせなければならない。



「ナギ、とりあえず朝ごはん食べたら寝よう。オレ眠い。」
「ああ、私このまま今日の夜まで起きてるから。」



 ガツン、と頭を金槌で殴打されたような衝撃がレッドの全身を駆け巡る。今のは聞き違いだろうかと箸を箸置きに置いて、汚いとは思いつつナギ側の耳をかっぽじってみる。ふっと息を吹きかけて、あまり無い粉をあさっての方角に吹き飛ばした後、



「ナギ、今寝ないって言った?」
「うん、寝ない。起きてる。レッド寝てていいよ。」



 今度は金槌どころかメタグロスのコメットパンチをノーガードで食らったような衝撃が全身を支配した。いつもは聞き分けのいいナギが、どうして頑なに寝ようとしないのか。
 思い当たるのは、今レッドの部屋のベッドの上に電源を点けたまま放置してある充電器を繋いだままのDSに入っているソフト。言うまでもなくポケットモンスターオンラインDS版のカートリッジが入っているわけだが、問題はソフト自体ではなく、その中で行われている期間限定イベントだ。ポケットモンスターオンラインでは今、年末クリスマス企画と称して25日まで獲得経験値及び獲得金額2倍イベントをやっている。昨晩はイベント開始日だった。そのためかは知らないが、昨晩もレッドのポケモンたちに手も足も出せなかったナギは、敗戦後黙々と草原や洞窟に入り浸って野生のポケモンを狩り続けて朝を迎え、今に至っていた。ナギが寝ないのはどう考えてもこのイベントが原因だった。
 レッドもかつては廃人並にプレイしていた身だ。期間限定イベント、なおかつそれが獲得経験値と獲得金額2倍ともなれば、それこそ1週間不眠不休で狩り続けていたこともある。今は頂点を極めてしまったからそこまでやりこむこともないが、ナギは今まさにかつての廃人レッドの軌跡を辿ろうとしていた。さすがに仕事があるから二日連続で徹夜するなんてことはないだろうが、元々頑丈な体ではない。1日分睡眠を取らなかっただけでも後々になってしっぺ返しをくらうだろう。そうなることは目に見えた。



「もー、ナギ、ゲームは起きてからすればいいだろ。」
「だってやれるときにやっとかないと、レッドに追いつけないもん。」



 ズキッ。
 今度は心臓にどくばりを打ち込まれた気分になる。ナギが必死になってレッドを追いかけようとしているのはレッド自身薄々気付いていた。けれども一度<原点にして頂点>などという二つ名を得てしまった以上、負けたり後に引けないのが男の性というもの。そのせいで新しいキャラを作ることも、かといってナギを置いてきぼりにしないよう、先に進むことも(というか現時点ではもう先など無いところに到達してしまったわけだが)出来ないでいる中途半端な自分に嫌気が差す。
 レッドは考えて考えて、考えたけれどもいい答えが見つからなかった。気付かれないようにため息をついて、とっても卑怯な最終手段に出ることにする。茶碗の中の残りの白米を掻きこんで味噌汁を一気にすすり、空いた食器を流し場に運んで水を張っておく。寝て起きた後に全部片付けるのがいつものやり方なのだ。突然ピッチを上げてご飯を平らげたレッドの勢いに、さすがのナギも異変を感じたらしい。テレビを見ていた目をぱちくりさせて、赤い瞳の幼馴染みを注視する。ここぞ勝負時だ、とレッドは思い切って着ていた黒の半そでTシャツを脱いだ。1枚しか着ていないから、脱いでしまえば当然上半身は裸だ。あらわになった色白の痩せ型上半身から目を逸らすように、ナギは慌てて目を両手で覆った。



「レレレレ、レッド、何してるの、ここ脱衣所じゃないわよ。」
「ナギが寝るまでこの格好で過ごす。」
「えええええ?!」





***********




卒論無事に出してきました。
疲れたのでちとタイム。


没…にしたい…

拍手[0回]

PR
2009'12.15.Tue
「くっそ、今日も負けた…。」



 銀白の上に軒並み倒れた手持ちのポケモンがPC画面に映っていた。なかなかいい勝負で、最後は1対1までもちこんだのだが、今日こそは勝てそうだと油断した瞬間ピカチュウが雪の中に潜っていることに気付かずボルテッカーを打たれての一発KOだった。はらはらと空から粉雪が降って随分と嵩を増した積雪に吸い込まれていく。ここはゲームの中だ。これ以上吹雪こうが雪量が変化することはないし、その寒さに身が震えることもない。けれども心には敗北の二文字が雪よりも厳しく胸に重くのしかかった。
 畜生と呟いて手持ちたちをボールに戻す操作をする。そうこうしているうちに今しがた一戦を交え終えたプレイヤーは、雪山に半そでという明らかに違和感のある出で立ちの身を翻して洞窟に向かい歩き始めた。



『ちょ、待てよ。』



 グリーンはマウスのカーソールをその去り行く赤の帽子に重ねて追従のコマンドを入力する。すぐさま自分が作ったバーチャルキャラクターは雪の上についていた膝を立てて走りながら前を行く少年を追いかけた。



『おいおい無視かよ。』
『日本語で喋ってるのを聞かれたら面倒なんだよ。』
『は?お前日本人なんだからいいだろ別に。』



 洞窟内に入るなり口を開いたプレイヤーの声は反響してグリーンの耳に届く。その不可解な文章に正論を振りかざすと、画面右下のテキスト表示エリアに長ったらしいURLが初めのhを抜いた状態で表示される。8ちゃんねると呼ばれる有名な巨大集合掲示板のどれかがリンク元で、ブラクラじゃないだろうなと内心ビクビクしつつグリーンはそのURLをコピーしブラウザのURL入力欄にはりつけエンターを押した。一瞬のダウンロードの間を置いて開いたページには8ちゃんねる独特の掲示板が表示され、そのスレには「ポケットモンスター【<原点にして頂点>の正体その12人目】オンライン」などというタイトルが付いている。以下不特定多数の身元が割れない人たちがあれやこれやと己の推測を書き連ねて論議をかましていた。最初は宇宙人・システム管理者・突然発生したAI・3歳児などとふざけた輩の書き込みで埋まっていたが後半にいくとある1人の発言によって板の流れは変わっていた。というのも、そこにはこう書かれていたのだ。



<今日偶然伝説のプレイヤーを山のふもとで見ました。息を潜めてうかがっていたところ、突然やってきた女性キャラクターに対して「Hey kanojyo. otyasiteikanai?」とかたことの日本語で発言していたのです。名前もredと英語表記だし、もしかして中の人は外国の方なんじゃないでしょうか。>



 この有力な書き込みによって板は一気に熱を増し、米国人かいや韓国だろ、どこの外国野郎なんだと猛烈ないいあいになっていた。そのままの流れで900目の書き込みを超えているから、そろそろ次のスレッドが出来る勢いだ。グリーンは画面に映る少年を無言で見た。そしてヘッドセットを耳から外して自室の窓を開き、カーテンが微妙に閉まりきっていない隣の家の向かい窓に、いつも壁にかけてある懐中電灯の光を数度当てる。カーテンが開いて中からはPC画面に映っているのとそっくりな外見の少年が姿を現し、窓を開いた。



「まぶしい。」
「悪い。」
「で、何?」
「お前馬鹿だろ。」



 グリーンは言い切り窓を閉める。ついでにカーテンも隙間が出来ないように閉める。窓際に置いたPC前に座って、今度は手入力で



『お前馬鹿だろ。』



 大事なことなので2回言いました。と付け足しておく。再びつけたヘッドセットからは「それだけのために手間かけさせるなよ」と憤慨した先ほどの少年の声が聞こえてきた。ついでにヘッドセット越しにも『お前馬鹿だろ』と言ってやる。どうやったら19歳にもなった人間があんな稚拙な英語を喋れるんだというかむしろ英語にすらなってないぞお前小学生だって笑うぜ恥をしれ恥を、と罵れば、画面の中の少年はにこっと笑うモーションをとる。



『いやぁ、ナギを笑わせようと思ってわざとやったんだけどさ、なんか勝手に外国人と勘違いされちゃったんだよな。まぁお陰で挑戦者ちょっと減ったし喋りかけられても無視する理由が出来たから、この際外国人で通しちゃおうっておもったわけ、OK?』
『OK?じゃねー!!!!』



 グリーンの叫びを無視したレッドは『だからお前も協力しろよ、オレは…そうだなセイシェルあたりの住人ってことにしとくか』等と呟きながらどんどん洞窟の奥に進んで行く。だから勝手に話をまとめるなとぼやきながらその跡をついて洞窟の奥にたどり着くと、1人の少女のキャラクターが岩の上に座っていた。



『ナギ?』
『今風呂放置中だよ。』



 グリーンが目の前までいって手を振って見せてもレッドの言う通りなのかナギと名前が表示されたキャラクターは静かに体を上下させるだけだった。レッドはその間に割り込むように立つと、しゃがんでナギと目線をあわせる。



『やっぱ現実のナギのほうが可愛いな。』
『お前はノロケを聞かせるためにここまで連れてきたのかよ。』
『いや、勝手についてきたのグリーンだし。むしろオレとナギの愛の巣に入ってくるなよ。帰れ、山へ帰れ。』
『ここが山だっての。』
『いやリアルが山に帰れ。』
『お前は一回海に沈め。』



 ぐりぐりとしゃがみ込んだ背を踏みつければ、黒髪の隙間から鋭い赤の眼が半眼になって睨んでくる。いつものことなので今更恐怖は感じない。このやり取りも幼稚園から続けてきたものだ。月日が流れて体が大人に近付こうが、お互いの精神的年齢は幼い頃となんら変わっていない。めまぐるしく動いて行く周囲の環境に取り残されたときに会うと安心できるライバルであり幼馴染みであり腐れ縁みたいなものだった。



『そうだ聞いてくれよ、昨日晩ナギが家に泊まりにきてたんだけど、すっげー可愛くてさ。』
『あーはいはい。で?』
『もじもじしながら「…もっ、じらさないでちゃんと入れてっ…!」て顔を赤らめて上目遣いで見てくるんだぜ、隠されたオレのポケモンの笛が目覚めのメロディを奏でて大爆発するかと思ったね。ギガ萌えだよ。』
『ブフウウウーっ!ゲホッ、ゲホッ。』



 グリーンはノロケに付き合うのはめんどくさいと思いながらも、コイツ友達いねーから寂しいんだろうなとかコイツのライバルはオレだからという後半意味の分からない理由で聞く体制に入りマグカップの紅茶を口に含んでいたのだが、ヘッドセットが拾ったレッドの問題発言に薄茶色いハイドロポンプを思いっきり画面へとぶちかまし、咽た。慌てて備え付けのティッシュで画面やらキーボードや服に散った紅茶を咽ながら拭いて、どこか壊れたかもしれないと心配になる。が、そんな心配よりレッドの発言が気になる。



『グリーン今もしかしてなんか噴いた?』



 グリーンは咽っぱなしで折れる体をなんとか伸ばして、テキスト画面に『kwsk』とだけ打ち込み、レッドの話の続きを待った。咳き込む音は相手の耳に苦痛だろうから、一方的にこちらからの音声はミュートにする。



『は、詳しく?なんだまさかお前ナギに興味があるんじゃないだろうな。』
『オレはシロ一筋だから安心しろ。とりあえず続きkwsk。』



 さらりと恥ずかしいことを打ち込んでしまったと思いつつも、どうせ本人が見ていないのだからバレやしないと大胆な気持ちになる。レッドは少しの間発言をやめたが、ぽつぽつと昨晩の出来事を話し始めた。



『ほら、最初っていきなり突っ込んだら痛いかもしれないだろ。だから入り口の辺りをじわじわつついてたんだ。』



 オレは未だにシロの手を握ったり肩を寄せるだけでも姉やシロの家のナナミ(柴犬)に妨害されてあまつさえキスすらもしたことがないというのに、一体なにそのプロセスを軽々とギャロップのように飛び越えて大人の展開に至ってんだよと思う。生々しすぎる発言におもわず顔が赤らみ、このゲームが相手のリアル顔を見ながら話すテレビ電話のシステムを積んでなくてよかったと胸を撫で下ろした。



『そしたら最初はくすぐったそうに身をよじったりしてたんだけど、そのうちだんだん艶っぽい声を出し初めてな。「もうちょっと入れていいよ」って言うもんだから入れたわけだよ』



 入れたのかよ。
 昨晩自分がこのパソコンに張り付いてほぼ徹夜でレポートを必死になって仕上げている間、向かい側の窓向こうの若干隙間が開いたカーテンの奥で、そんなアダルティな展開が繰り広げられていたとは誰が想像できようか。マジ沈め、海に沈め。むしろ成層圏を突き破って銀河の果に消えろ。画面前でこぶしを握りしめながら怒りに身を震わすグリーンにレッドが気付くはずがなく、発言はなおも続く。



『ゆっくり入れてったら突然ナギが「痛いっ」って言って慌てて引き抜いたら、さきっぽにちょっと血が付いてて。』



 うわぁやっちゃったよコイツマジやっちゃいましたよコイツちょっとレッド君のお母さん聞きましたかコイツ幼馴染みに手を出しちゃいましたよお母さん釘バットで御尻ぺんぺんしてやってくださいレッド君のお母さん。胸の中でうわーうわーと騒いでレッドの母親に念を送る。もうこれまでの会話でグリーンのお腹はいっぱいだった。むしろ予想外を越える展開にお腹というか堪忍袋の緒が切れそうだった。オレはまだシロと恋人っぽい雰囲気を楽しんだことが無いというのに。42キロのフルマラソンで40キロくらいの差をつけられた気分になる。もちろん自分は2キロ地点で、レッドは42キロ地点。つまりゴール済み。絶望した、ああ絶望した。
 レッドの一人語りはまだ終らない。




『謝ったら「大丈夫だ」ってにっこり笑って言うもんだから、オレは思わずオレの自慢のポケモンの笛で無茶苦茶にしてやりたくなったんだ。でもこのまま続けても、オレ今まで他人相手に全然やったことないから下手糞で、さっきみたいに傷つけて余計血が出ちゃいけないとおもって止めようとしたわけ。』



 なんだかんだでコイツはナギに対しては優しいからな、とちょっとばかり安堵する。乾いた喉を潤そうと紅茶を口に含み、



『そしたらナギってば、「そっちはいいからもう片方をお願い。」って言ってさ。体の向きを変えさせて反対側の穴に恐る恐る突っ込んだら、なんかさっきの穴よりすんなり入ってさ、入り口付近で抜いたり挿したりを繰り返したら、艶っぽい声で「…もっ、じらさないでちゃんと入れてっ…!」って』
「うわあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああ!!!!!!!!!!!!!あああああああああああああああ!!!!!!!!!」



 グリーンはマグカップを投げ捨て叫んだ。口に含んだ紅茶の存在も忘れて叫んだ。その叫びはミュートにしているから通じないはずの相手にも異変を感じさせ、隣の窓が乱暴に開く音がする。けれどもグリーンはカーテンを締め切ったまま頭を抱え込んでキーボードに額をぶちつけた。



『gひああえhggっぁ』
『ちょ、おま、どうしたんだよ。大丈夫か?グリーン、グリーン!』



 隣の窓が閉まってヘッドセットに再びレッドの声が聞こえる。けれどもグリーンは返事はせずに、痛くなった額の変わりに今度はこぶしをキーに叩きつける。
 あのナギが、ナギが。一見照れ屋で純情そうな幼馴染みのナギが。まさかもう一つの穴、つまり後ろの穴のほうを好んでいたなんで…!!!驚愕に思考の整理が追いつかない。とにかく叩いて叩いて、後にキーボードクラッシャーというあだ名をこの後やってきたレッドにつけられるはめになるのだが、そんなことつゆ知らずキーに握ったこぶしを叩きつけ続けた。 やがて下の階が騒がしくなってくる。ドタドタという足音とともに、鍵のついていないグリーンの部屋のドアが勢いよく開く。寝間着姿のナナミを引き連れたレッドが半そでTシャツで押し入ってきた。



「おいグリーンどうしたんだよ!!」
「グリーン!?あなたまさかテングダケ(食後15分~30分で興奮状態になり神経錯乱、幻覚、視力障害等を起こす。死亡する事は少なくほぼ4~5時間位で眠ってしまう)でも食べたの?!」
「うああああああああああああああああああ!!!!!!!!」



 もう一度額をキーボードに打ちつけ始めたグリーンをレッドが押さえ込み、ナナミが手にしたガムテープでグリーンの両手と両足をぐるぐるまきにする。そのままベッドの上に放り投げて少しの間見守っていたのだが、やがてグリーンは唐突に息を引き取ったようにがっくりと項垂れた。



「グリーン?!」
「…大丈夫、意識を失っただけみたいだわ。」
「一体なんで…。」
「庭にテングダケが生えてるんだけどそれを食べたときの症状に近いわ。おじい様に連絡を取ってみるからレッド君はグリーンを見ててちょうだい。」



 ナナミにガムテープを渡されたレッドはベッドで芋虫のように丸まり失神したグリーンを不安気に見つめる。その口が小さく動いた。
 耳かきの話をしてただけなのに、どうしてこうなった、と。















**********



久々にいい仕事した気分です。
すいませんグリーンファンの皆様。
私は彼のことも大好きです、ええ大好きです。本当ですよ。
そのうち逆パターンも(ry

拍手[0回]

2009'12.14.Mon
この世界における<ポケットモンスター>とは?


 GB世代に空前のブームを巻き起こしたモンスターゲーム。以後新作が何本も出てきたが、ついにオンラインゲーム化し、参加プレイヤー人数は全世界において常にトップを誇っている。PCでも出来るがDSで手軽に遊べ、各地のプレイヤー達とリアルタイムにボイスチャット、共闘、対戦が出来るシステム。モンスターを狩る、あるいはゲットしながら仲間を増やして育てていく他にも、他人と戦わせたり、木の実の育成やポケモンを飾りその見た目を競わすコンテスト、ポケスロンと呼ばれる競技大会などがある。シーズンにあわせて随時何かしらのイベントを行っている。ポケモンだけでなくプレイヤーの外見も細かく設定できて、DSソフト中最高美麗のグラフィックを誇っている。PCでやる場合、その感動は更なるものとなるだろう。基本的にプレイ自体は無料だが、特殊アイテムなどは課金制。


キャラクター設定


◆レッドヒロイン(ナギ)
 真白町の外れに在住。両親が仲良くて幼稚園以前からレッドとは知り合い。16歳のときに両親疾走。その頃から記憶障害が度々発生している。常盤市にある常盤高校を卒業後、真白町の雑貨屋で働いて一人で暮らしている。レッドは家族だと思っている節がある。そのため彼の言動にドキドキすることはあっても錯覚だと思い込んでいる。しっかり者だがどこか抜けていることもある。

◆グリーンヒロイン(シロ)
 昔は真白町に住んでいたが、高校を卒業後は家族と共に玉虫市に引っ越して総合大学に通っている。幼稚園の頃からグリーンとは仲がよく、一緒に冒険しては怪我をして帰ってくることなど当たり前だった。おっとりした雰囲気でいささか天然気味だが、行動力はある。なので暇が出来るたびに真白町に戻ってグリーンに会ったりする。ナナミに過剰な愛を注がれ、また本人もナナミを慕っている。ペットの柴犬にナナミと名づける程だ。グリーンのことはかけがえのない友達だと思っている。

■レッド
 真白町中心部に在住。強度の眼白皮症(眼球だけにおける白皮症)のため瞳孔が赤い。そのため幼い頃からイジメにあい、小学校の頃から不登校気味に。元来明るい性格は卑屈になってしまったが、ナギだけには素直。通信制の高校を卒業後、得意のPCスキルでHP作成代行業や大手会社のシステム保守などを自宅に居ながら行いそこそこいい収入を得ている。目が悪く、PCを使うときは眼鏡着用。オンラインゲームソフト『ポケットモンスター』では<原点にして頂点>という二つ名で呼ばれるほど強い伝説のトレーナー。もとい廃人。ゲーム内最も難易度の高いシロガネ山の頂上に居座り、たまに来る挑戦者を蹴散らしている。

■グリーン
 真白町中心部在住。ちなみにレッドの隣に家がある。レッドとは腐れ縁のようなもので、貶しあいはするものの、卑怯なイジメをしたことはない。祖父のオーキド・ユキナリが有名な医者で、その姿を尊敬し、後を追うように常盤高校を卒業後、常盤市内の有名医大に通っている。幼稚園の頃からシロとは仲良しで、年を重ねるごとに異性として意識し始め、自分がシロを好きなことに気付き、その伝わらない気持ちに日々悶々とした生活を送っている。基本的にクールでキザだが、シロやナギ、レッド達を目の前にするとその姿勢は崩れる。オンラインゲーム内では自称<レッドのライバル>。だがしかし勝てたためしがない。

◆ナナミ
 グリーンの姉。極端にシロを気に入っている。美人のくせに彼氏を一切作らないことが真白町の七不思議といわれ、生きながらにして怪奇現象扱いされている。男がダメというわけではなく、シロの魅力に敵う男が居ないから必然的にそうなったまでのこと。グリーンとシロの邪魔をするためならばあらゆる手段をつくして妨害に走る。花が大好きで、庭の花壇は一つの自慢。薬剤師の免許を持っており、普段は町の薬局で働いている。

◆ブルー
 転校族の女の子。常盤高校で少しの間だけナギやシロ達とともに学んだ。二人のことを相当気に入っており、グリーンを冷やかすのが大好き。一応レッドの存在も情報だけは知っている。女の子は大切にし、男には厳しい姉御肌。在学中にすぐ転校してしまい、現在も各地を点々としているそうだ。

◆イエロー
 性同一性障害の少女。常盤市に住んでおりシロ達の後輩。シロが大好き。あどけなく純粋そうな顔立ちをしているくせに、グリーン等男を目の前にしたときはとてつもなく腹黒い。ある意味一番男気溢れる女の子。学ランに麦藁帽子という異彩を放つ出で立ちだが、帽子を脱ぐとポニーテールが飛び出してくる。ナナミに次ぐグリーンの敵。休みの昼間はコンビニでバイトしている。

■サカキ
 真白町と常盤市の境にあるコンビニの店長。従業員の身を案じて自ら夜番のシフトに入っている。たまに深夜に買い物に来るレッドのことを可愛がっているが、実のところ遠い昔離婚した嫁が連れ立って行ってしまった息子とその影を重ねている。ちなみに副業で株もしており、そちらのほうでかなり稼いでいる。コンビニ経営は一つの趣味なんだとか。昼の従業員のイエローの昼寝グセに頭を抱えている。

▼イーブイ
 グリーンの家で飼われているゴールデンレトリバー。かつて大流行し今もその勢いが衰えないポケットモンスターの中に出てくるイーブイの名をシロが付けた。グリーンが大好きで所かまわずその顔を舐めたがる。ちなみに主の顔を舐める犬っていうのは、主のことを文字通りナメてるんだって。つまり顔を舐められるグリーンは・・・。


以下仮設定

■ゴールド
 近畿地方に住む少年。オンラインゲームポケットモンスターの中で伝説のトレーナーレッドを崇拝し、たまたま出あったプレイヤーナギに淡い恋心を募らせている。レッドとナギがリアル親友なんてことは知らない。熱しやすく猪突猛進型に見えるが、案外深く物事を考えている。ただし人の意見は耳にしない。

■シルバー
 母親が他の男を作って居心地が悪くなったため、その元を飛び出した家出少年。そのときたまたまブルーと出会い気に入られ、以後彼女の家族と一緒に各地をてんてんとしている。実の父親が常盤市のコンビニ店長をやっていることを知らない。ブルー大好き。

◆クリス
 ゴールドのクラスメイト。委員長。毎日夜更かしして学校に遅刻及び授業中に寝るゴールドの態度に苛立っている。

■マサキ
 ポケットモンスターをオンラインゲーム化したスタッフのチーフでありGM。薬アイテムの名前などを考案するために有名な医師オーキドに協力を依頼したところ、孫のナナミを紹介されて、以後彼女にほれる。だがろくな扱いを受けていない。

■ダイゴ
 シロが通う大学に臨時講義をしにきた鉱物化学者。聴衆生の中で唯一真剣に耳を傾けていたシロを気に入り、以後半ストーカー化。超大金持ち。

■ワタル
 常盤高校の体育教師。まだ若い。体操服姿のシロを見てよく鼻血を噴いていた。本人は無自覚だが変態の素質がある。

■ルビー
 九州在住。オンラインゲームを通してナギに惚れたもう一人の犠牲者。おそろしく大人っぽいが実は小学生。

◆サファイア
 九州在住。ゲーム中よく面倒を見てくれるナギを慕っている。考え方が異なるルビーとよくいがみあっている。





ナギ寄りの人物達
レッド
ゴールド
ルビー
サファイア

シロ寄りの人物たち
グリーン
イエロー
ナナミ
ダイゴ
ワタル

拍手[0回]

2009'12.13.Sun
「ねぇ、何か欲しいものとかある?」



 いつものように遊びに来た幼馴染みの部屋のベッドの上で、ナギはcamcam(売り上げNo1の女性ファッション誌のこと)のページをめくりながらなんとなくそんなことを口にした。雑誌の中のモデル達は可愛いコートに身を包み、長い髪をくるくると巻いてご自慢の美しさを披露している。その中の一人が身につけているカチューシャは今働いている雑貨屋がつい最近仕入れたものと同じデザインだった。明日仕事に行ったら、在庫発注を少し多めにしとこうと考えつつ、どうやったらこんな風にお肌つるつるで綺麗になれるんだろう、と最近寒さで荒れがちな頬をさすっていると、なにかの崩れ落ちるような音が聞こえてきた。その音が少し尋常じゃなかったので雑誌から顔を上げて音がしたほうを見てみれば、先ほど質問を投げかけた相手がパソコン用の椅子からひっくり転げて落ちていた。



「大丈夫?」



 側まで行ってみてみると、レッドは驚愕に目を見開いて天上をガン見している。何か居るのだろうかと思って天井を見上げてみても、そこには何もなかった。視線からしてみても、ベッドの上のゴーストっぽい染みを見て驚愕しているわけでもなさそうだ。そもそも今更アレを見て驚くなど、この部屋に十数年寝起きしてきたレッドにはありえないことだろう。

 レッド、レッドさん、レッドく~ん、おーい。

 目の前で手をヒラヒラと振ってみても、レッドは回復の兆しを見せない。これは本当に打ち所が悪かったかと急激に心配になって携帯を取り出そうと手をポケットに突っ込もうとしたその時。



「ナギ、今なんていった?」



 化け物を見たように固まっていた目が、ぎょろりとナギの顔を見る。それは一種のホラーシーンのように思えなくもなく、ナギは少しばかりの恐怖を感じた。瞳が赤い彼のことだから、なおさらその恐さが際立っている。



「えっと、大丈夫って聞いたんだけど。」
「違う、その前。」
「その前?」



 大丈夫の前は一体何を言ったんだっけ。確か雑誌を読んでいて、なんとなく何かを口にしたような…。
 結構無意識に言っていたのだろう。言葉はなかなか思い当たらない。レッドはよいしょっと勢いをつけて上体を起こすと、打ち付けたであろう頭を抑えながら言った。



「欲しいものがある?って聞こえた気がしたんだけど、俺の聞き間違いか。」
「あー、それ言った言った。確かに言ったわ。」



 最近物忘れが激しくって、嫌になっちゃうよね。
 困ったように笑って見せたナギの肩を、むんずとレッドの両手が正面から掴みかかる。痛いわけではないが、ちょっとやそっとじゃその拘束からは逃れられなさそうな力は込められていて、普段そんな風に扱われることがない分、ナギはたじろいだ。そのことに気付いているのかいないのか、レッドはグイと顔を近づけて真剣な面持ちで尋ねてくる。



「それって何でもいいのか?」
「うん。」



 うなづいた後で、ナギはしまったと思った。何でもいいなんてことを言ってしまったら、引きこもりを初めて早数年の若干ヤミ気味少年のこと、何を要求してくるかわからない。さすがに臓物が欲しいとは言わないだろうが、もしかしたら髪の毛の10本でも欲しいといって気付かぬ間に通販で買った藁人形にそれを仕込み、笑顔で夜な夜な五寸釘で打ち付けたりするかもしれない。



「…前言撤回…一応良心をフルに活動させて私にしんどくない程度のものをお願いします…。」



 金銭的な面でも、精神的な面においても。
 付け足された条件にレッドは少しだけ落胆したようだったが、それでもめげずに何がいいだろうかと腕を組んで考え始める。



「お財布的なことを考えたら、上限は2万までだと助かるわ。」



 年末は普段の月に比べると出費が多い。仕事先や高校時代の知り合い、そのほかも含めると既に忘年会の予定は4件詰まっていた。ナギは酒をあまり飲まない分、会費に含まれた飲み放題の料金を捨てに行っているようなものだが、集まって騒ぐのは嫌いではない。付き合いを大切にしたいから、全部に参加の予定だ。



「でもなんで急に。」
「ほら、クリスマスもうすぐでしょ。」
「そうなのか?」
「そうなの。」



 ほら見て、今日は12月13日、と壁にかかったカレンダーを指差したナギは、印字された3月の文字にアレっと首を傾げる。世間は今12月のはずなのに、なんでこの幼馴染みのカレンダーは春の月のまま止まっているのか。動揺を見せるナギに、レッドはニコっと笑みを向ける。



「いい事教えてあげるよナギ。引きこもってると今日が何月で何日で何曜日とか、どうでもよくなってくるんだよ。だからカレンダーはめくらない。ちなみにあれは3年前のカレンダーだ。オレも3年ぶりにあそこにかかってあることに気付いた。」
「そ、そうなんだ…。」



 部屋の片付けはそこそこしているのに、そういうところには目が行かないのだろうか。うろたえるナギを傍目に、レッドは「うーんうーん」とお手洗の便座に座って小1時間唸る一家の大黒柱のような顔をしてみせる。そんなに真剣でなくてもいいだろうに、悩みすぎて綺麗な黒髪がはげたら大変だと、その頭に手を乗せてわしゃわしゃっとすると、突然パソコンからけたたましいベルの音がし始める。昔の家にある黒電話の音に近い。その音が何なのかはナギも知っている。スカイス(作中においてPCを使いネット回線を介して電話をするソフトのこと)の着信音だ。



「こんな真剣な時に一体誰だよ。」



 たかがクリスマスプレゼントを考えるのにそこまで真剣にならなくてもいいだろうに。ツッコミを飲み込んだナギの肩から手を放したレッドは、立ち上がって画面を確認し、アレっと驚きの声をあげた。









************







現代verだとなんか思うようにかけない。

拍手[0回]

2009'12.13.Sun
昔勢いあまって作った替え歌MADのカラオケverを求められている方がいらっしゃったので作っちゃいました。
ニコ動ですいません。



【ニコニコ動画】ポケスペ ピカがレッドに贈る歌『キミに出会って』カラオケver


絵うまくなりたいです…。

拍手[0回]

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7
«  BackHOME : Next »
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[01/02 管理人]
[05/07 恵美]
[03/12 水島ゆきさ(管理人)]
[03/11 流水]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
水島ゆきさ
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
カウンター

欠片むすび wrote all articles.
Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]